【連載】映画と私たち「人類は50人単位で生きてきた」(ふじやまままこ)その4

対談する人

ふじやまままこ
60年代前半に東京で生まれる。広告会社、新聞社、出版社などを経てライターに。斎藤先生とは18歳くらいの時に一度会う。その後30代後半で再会。ウツや発達障害を抱えつつ、なんとなく生きている。

 

人類は50人単位で生きてきた

人間のマインドってのは、明らかにチンパンジーたちと違うでしょう、それから今はいないけどアウストラロピテクスとか、(人類の祖先といわれる)ルーシーが330万年前ね。それから、ホモエロクトスが100万年前で、そっからピテカントロプスエレクトスで、その辺りから人類と呼ばれてる。で、ルーシーの頃は400cc、今の成人のチンパンジーと同じ脳の大きさ。その頃のコミュニケーションのあり方がエレクトスになると進化して、それまでと全然違うんだ。だから歩行の仕方もね、エレクトスつうのは直立っていう意味だから、 ちょっとこう人間に近い歩き方になってきた。で、そこからホモサピエンスが生まれて、その後、その内の一派は50万年前位に、私たちの祖先を置いて、ヨーロッパに行った、アフリカから出てね。緯度が高いとこ行くと皮膚が黒くなるから、その頃は色黒だった。アフリカでは紫外線避けにはいいんだけど、色んな種類の放射線の中に人間が吸収しなくちゃいけないのもある。緯度が高い所に行くと、日光を浴びないと、身体に必要なビタミンDが入ってこない。だからアフリカからアメリカに連れてこられた奴隷たちは、みんなクル病で死んでる。今、遺体の発掘も始まってて、骨が曲がってるから死因がクル病だと判ってきた。逆に言うと白人というのが、なぜできたかって言えば、僕らの先祖を置いて緯度が高い所に出かけていった人たちは、みんな色が白くて、髪が金髪とか茶色。それは人類が、標的のマンモスとか獲って歩いてた頃で、その内に肉がなくなっちゃった。氷期っていうんだね、で氷期にちょっと緩みがあんだよ、間氷期って言って。氷河って今は言わない。氷期になるとアフリカは乾いてカサカサになる。カンカン陽が照る時に、ちょっと元気になって出かけるんだけど。氷河期になると、カサカサでフルーツがあまり実らなくなって、ほとんどいい想いすることないから、その土地を出てったんだよね。 で、僕らの祖先はちょっとそこで出てくのをためらったりした。ネアンデルタール渓谷で遺体が発掘された人たちは それより50万年前に ヨーロッパへ出てって、ずっとシベリア辺りまで広がっていたんだよ。大型獣を追ってね、で、その人らがいなくなってから、氷河期がもっと厳しくなって、結局イベリア半島の辺りで貝とって食って、ポルトガルとかあの辺の海岸で。そこへようやく10万年前って言っていいかな、ホモサピエンスの類人猿の人類の先祖が上陸して、20万年から10万年前位、7万年前って言う人もいるけど。で、私が言ってるのは、そこで50人単位で動いていたわけ。

―その時代から50人で行動していたと?

原始核家族ってやつで、一人の女と多分子供は一人と二人、 今の都市生活の核家族とよく似てる。原始核家族がそうなったのは、狩猟採集だから、そんなに沢山の子供が産めないわけだよね。どの季節に何がある(獲れる)かを知っている。だからベリー食べにいくとか、鮭獲りにとか出かけていく。そうすると、獲物を取るのに動物たちと戦ったりしないといけないから、大型動物を獲るには、すごいマラソン力と、それから短距離的な爆発的な足力が要る。この二つを兼ね備えてるのは、人間しかいないんだ。どんなに強そうな動物でも。例えばチーターみたいにものすごく早くて、人間なんかはとても追いつけないみたいだけど、全力で走れんのは3分。人間は長い時間いると汗が出るけど、動物たちは汗が出ない。だから30分とか1時間をあの速力で走ったらチーターは死んじゃう。人間はそこらへんはもう一日中でもね、槍とか、ちょっと進歩してからは投げ弓の原型みたいなね、ああいう石ころを投げる石器類も2センチになって、かなりでかいものを獲れる。でもすぐ腐っちゃうから持って帰る。その場で食うのもあるだろうけど、 でも生肉っていうのはなかなか食いちぎれないし、人の歯がそういうふうにできてない。だから持って帰って加熱する。すると食いやすくなる。だから腸もそんなに長くて大きい必要がないから、腸が小さくなって、腹が小さくなって、腰の上に乗っかりやすくなる。で、おまけに立ち上がるから、喉頭が下がるだろ。それから肉食だけど、その前は動物の骨の中の骨髄食ってたから、油食だった。肉食になって食べやすくなるから、1日中歯を動かさなくてもいい。だから歯は小さくなり、口の中が広く開くから、舌の回転がうまくいく、それでアとかウのほかにシとか、スとか子音が出るようになる。ここへ持ってきて、小鳥たちが毎日見てて、季節ごとに来てペアリングしたんだ。だから愛を叫ぶってか、歌う、みたいな、これが言語だよ。

だからぺアリングがものすごく深くできるようになるんだけど、ホモエレクトスの時代にじゃあ、採れた肉を誰に持ってくかというと。最初は子連れの飢えた女に決まってる。子連れの女たちを見るとみんな飢えてるわけよ。この辺が人間らしいんだけど、見すぼらしいっていうか、ハンサムじゃなかったり、年取ってたり、あるいは若すぎたりしても、飢えてる女だったら、食べ物をもらってくれて喜んでもらえるわけ。子どもがいるから。これがメンタライゼーション。女は1週間後ももらえるじゃないか期待するようになる。そうこうするうちに今度はその男の自分の子供が生まれたりして。さっき言ったように、長距離のマラソンやったり。7歳児連れてさ、3歳児片手に抱えてね、肉は獲れないんだ。肉はだからそういう青少年が獲ってきて、女の役割は水汲みと薪割り。帰ってきた男たちの肉をすぐさま焼くわけだ。すると今まで食えないと思ってたものも、食えるようになる。毒抜きができる。下処理をして、毒を抜いて全分的にしたものを食べられるし、その頃から料理をしている。

―そっか、そのころから女性には料理をするプログラムがされていた?

クッキングが火の食って書いてね。火食が一気に脳を大きくした。脳っていうのはすごく人間にとって高価な器官で、何もしないで寝てるだけでもね。 1日のご飯食べなくても2割、脳で使ってるからお腹が空く。

―何もしなくても…あ、原稿書いてるとじっと座ってるのに、すごいお腹が空いたりします。

うん、でもねデフォルトでも、つまり何も考えないで、ボーッとしてても、2割脳を使えば脳がエネルギーを使う。確かに原稿書いてて腹減るけどね。

―え、それエネルギーが頭にいってるからじゃないんですか。

いってるけど、たとえじっとしてても、考えなければ腹は空かないけど、でも考えないってうのも難しい。結局、禅やってるみたいなもんだからね。

―考えない行為って難しいですよね。私なんて本当、下手な考え、休むに似たり。考えれば考えるほどいい方向にはいかない。あん時の元夫のあの発言、実は騙していたのかも、とか、友達の発言、あれはどういう意味だったんだろうとか、思い出して、怒ったり、悩んだりする。それをやめたいんですけどね…

それは無理だね。

―無理ですか?

うん、それは人だから、大きな脳を持っちゃった一つのサイドエフェクト、副作用だよね。

―でも、そんな終わったこと考えず、次にいこうって、次の人を見つけてる人もいるじゃないですか。

お腹が空くっていうのが一番大事なことで、何のかんの言っても、今度あなた年金もらうみたいだけど、それも一つの食う手段だろ。 そうやってシステムがちゃんとできてるから、年金がもらえる。そういうシステムを作る際の原型になってるのが50人の単位なんだよ。で、その中で順位を決めないと自分の言葉が出てこないの。

50人のうち25人が女で25人が男で、その50~100人ぐらいの単位の中で、誰がリーダーかとかさ、誰におべっか使ったらいいのかとかね、こいつは下手すると、みんな取られちゃうとかね。そういうことを考えて、それに沿って政治をやっているわけだ。誰が、どう考えてるのかがわかるっていうのが人間。そこにメンタライゼーションって言葉が出てくるんだよ。心を動かすこと、これ結局は推測なんですよ。じゃないかなっていう。だから子を抱えた飢えてる女なら、この肉を喜んでもらってくれるかな?と考えるのがメンタライゼーション。そうするとその女のほうは、「1週間後もまた肉もらえるかしら」と期待するわけだよ。で、そうこうするうちにその男も自分の子ができたりする。

そこで大事なことは、その子を持つ母の母ってのは、まだ生きてて母娘で一緒にいるわけ。これは他のエイプ類っていうか類人猿との違いだよ。チンパンジーだと47歳とか50代になってからも生んだ例は観察されてるんだけど、産んだ年に死んでる。死ぬまで生んでるわけだ。人間の場合は、ダーウィンの奥さんが48歳で10人目を生んで、31から生み始めて48だから、20年足らずか。一年に一人産む人もいる。 そうすると閉経までに15、6人、産めるわけだよ。で、ダーウィンの奥さんは88歳まで生きた。だから48歳で最後の12人目を生んで、88歳までだから40年間はおばあさんの役ができた。これは大きいわけ、つまり母と娘婿さんに当たる人との共同保育。効率よくいけば1年に1回生んで、お婆さんがいれば、その人にも友達がいるだろうしね。そこで女達の会話ってのは始まるわけだ。

チンパンジーの場合は、ライバル関係の娼婦たちが戦士たちに囲まれて、若いの年寄、人員は色々あるだろうけど、 でもほとんど会話やコミュニケーションがない。 それは観察されてるのでわかる。一方、人間の女達はしょっちゅう母と娘で、子の飼育を巡って、べちゃべちゃと話をして、「あの男稼ぎが悪いじゃないの」とか、「肉持ってくる回数がこっちの若い男の方があっちの男よりも多いよね。じゃあ乗換えようか、とか、こういう作戦を練ったりね。男の方もちょっと頑張んないと。今まで産んだ子も自分の子も他の男に持ってかれちゃうとかって、そこで今度は夕暮れに獲物を持って、その奥さんだとか、あの肉をもらってくれた年上の女の所へ急ぐ青年を背後から殺したりしてライバルがいなくなる、こういうのが人間。ライバルはみんな背後から殺すんだ。だけどあんまりなん人も殺すと、 今度は50人の中で「こいつ危ないやつだ!」ってことになって、逆に殺されたりする。この50人から外れると人間は生きていけないんだよ。コミュニケーションを絶たれるとね、すごく弱くなっちゃう。それが人なんだけど、他の動物だと、相手の心を推測して、本当かどうか確かめるための行動をするっていうようなことはできない。

〈つづく〉