【連載】映画と私たち『PERFET DAYS』②「自分の生き方を護るための基準」(ふじやまままこ)
『PERFECT DAYS』(パーフェクト・デイズ、原題:Perfect Days)は、2023年に日本・ドイツ合作で制作されたドラマ映画。
ヴィム・ヴェンダース監督が東京を舞台に、役所広司演じる清掃作業員の日々を描く。第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、役所が日本人俳優としては『誰も知らない』の柳楽優弥以来19年ぶり2人目となる男優賞を受賞したほか、作品はエキュメニカル審査員賞を受賞した。また2024年の第96回アカデミー賞では日本代表作品として国際長編映画賞にノミネートされた。(Wikipediaより)
対談する人
ふじやまままこ
60年代前半に東京で生まれる。広告会社、新聞社、出版社などを経てライターに。斎藤先生とは18歳くらいの時に一度会う。その後30代後半で再会。ウツや発達障害を抱えつつ、なんとなく生きている。
自分の生き方を護るための基準
それと、木漏れ日と人が一体化して、木の間から手が出たり、人の影が動くシーンがあったよね。後からその人影はホームレスの人だとわかるんだけど。あれは平山の見てる世界でもあるんだろうね。彼にとっての世の中は、僕らが見てるのとはちょっと違う世界で、童話的で幻想的。あれはシドイド(統合失調症)の人たちが持っている世界なんだ。
―田中泯が踊るあのシーンは夢かと思ったら、平山に見えている世界なんですね。見えないものが見えている…だから平山は誰もいない方に向かって挨拶しているのか!
なんとなく、この人は“シャバ”にいない期間があったのかな、入院していたとか?というのも考えました。
彼は、現実世界とは強迫性で繋がっているから、侵入されると困惑する。家出した姪がアパートに来た際、拒否はできないけど困ってるでしょ?
―自分はいつもと違う場所で寝て、窮屈な思いをしてる。日常を乱されて大丈夫かな平山、ってどきどきします。
それともう一つ、どうしても命につながるものとして、植物っていうのが大事になる。
―きっちり愛情をもって育てていますね、一日中照明をつけっぱなしで。
植物に水をやるため、寝てる姪を起こさないように静かに部屋に入ったりするでしょ。
侵入者が来ても、なるべく自分の世界を壊されないように努めるものの、それ以上のことはできない。部屋にある物の置き場所も、ちょっとでも違ってしまうとダメなんだよ。
―侵入されて困っても、積極的に追い出したり、攻撃したりはできないってことですね。
毎日は変わらないようでいて、そこにはいろんなドラマがある。彼は気に入る、気に入らない、の小さなレベルを置いていて、そこにバーのママさんが気に入る人として、ちょっと入ってくる。
「朝日のあたる家」(HOUSE OF THE RISING SUN)を歌ってたけど、日本語訳も良かったね。
―ママ役の石川さゆりもうまいんですけど、あの「朝日楼」の日本語詞は私、ちあきなおみで知って衝撃を受けたんです。浅川マキの詞なんですね。
キレイな女優さんでやたら歌が上手いなと思ったら石川さゆりか。知らない俳優ばかりで私はすごく純朴な目で見られた。
―ヴェンダースは音楽に重きを置く人で、私はタイトルになっている「perfect day」のルー・リードが好きなこともあって映画に惹かれました。
音楽は全部70年代ぐらいの洋楽でよかったね。映像やセリフとすべてが合っていて。最後の歌(ニーナ・シモンの)は特に、歌詞と映像がリンクしていてよかったね。2分割の映像がすごくかっこいい。何もない静かな日々だったのに、色々と邪魔が入って乱される感じがよくわかる。
―あの表情で、カンヌの男優賞を取ったんじゃないでしょうか。
それと終盤で妹とハグするしますよね。あれがちょっと違和感があるという意見が多いみたいで。
そういう文化の所にいたんじゃないの。留学していたとか。
―確かに英語ができることがわかるシーンはあります。ただ他者とは距離を取っている人だから、ちょっと唐突な感じは残るんですよ。
過去にあった世界を一旦リセットしてきたんじゃないかな。あなたの言う、教育圧力で挫折したっていうのは、私も同じように感じた。
会社を継いだものの経営がうまくできず、重役会から追放されたとか。で、父が決めた人と結婚したけど、完全にちぐはぐで別れたとかね。
〈続く〉