【連載】映画と私たち「『ジョーカー』とアメリカ」(ふじやまままこ)その20

対談する人

ふじやまままこ
60年代前半に東京で生まれる。広告会社、新聞社、出版社などを経てライターに。斎藤先生とは18歳くらいの時に一度会う。その後30代後半で再会。ウツや発達障害を抱えつつ、なんとなく生きている。

 

『ジョーカー』とアメリカ

―『ジョーカー』(2019年)という映画は見てる側が「あーなんかわかる」って共感する瞬間があるのがコワい。

トランプが大統領選(2016年)に勝ったのと同じメカニズムが働いたね。あの勢いがクランプした。殺された3人っていうのは、まさにヒラリー・クリントンなんだよ。

―プーア・ホワイトの恨みがトランプを勝たせた。トランプだって金持ちだけど、知的エリートではないから?映画の製作者側には不穏な動きを感じ取れたのかも。

トランプは体を張ってレスリングに出てたり、破産してたり、ほんとに金持ちかどうかっていうのは疑問がある。

―そういわれたりしてますね。

父さんは金持ちかもしれないけど、当人は倒産ばっかりしてるみたいね。

―トランプタワーはいっぱいあるけど。

金持ちを自称してる貧乏人なんじゃない?少なくともあれでプアホワイトなら信者がいてもおかしくないような人だよ。なんか話し方を聞いたって浪花節っていうか、自分に酔ってるみたいね。

―ホワイトトラッシュが味方っていうところがありますよね。

味方というより信者だね。

―地域によっては信者が多くいますよね。

やっぱり肌の色が関係している。アメリカは少なくなったとはいえ、まだ5割いるんだよ白人が。

―ヨーロッパの色んな国からの人がいるからですよね。アングロサクソンの割合は相当減ってたような。

黒人は1割か1割5分だよ、元々奴隷貿易で連れてきた連中だからね。生き残って繁殖したとしてもそこまでは。

―*黒人12.1%、白人57.8%、ヒスパニック18.7%(2020年調べ)https://www.nhk.or.jp/school/syakai/10min_tiri/kyouzai/001601.pdf

それと中国人を始めとするアジア人。どんどん増えているけど、19世紀中期のアメリカでは中国人はようやくアメリカに着いても強制帰国させられり、頭の皮を剥がされたりしていた。
当時アメリカで東西を結ぶ鉄道を作ったんだ。西海岸で有名な大学を創設したリーランド・スタンフォード(1824-1893)はゴールドラッシュの時に家族で越してきた。メキシコの前のオレンジカウンティ辺りまで入植が進んできて、借金背負った貧乏人が殺到したわけだ。スタンフォードって男は頭が良くて、砂金堀りをしないで、彼らを相手に石鹸を売ったんだよ。簡易ベッドとタオルと石鹸、要するにホテル業をやった。それで大儲けして、自分は砂金は取らなかったけど。金を儲けて何をやったかって言うと、自分が手に入れた広大な土地を金に換えるために鉄道計画(セントラル・パシフィック鉄道)を立ち上げた。
そもそも東西横断鉄道を構想したのは、エイブラハム・リンカーンで、ネブラスカ州のオマハから西へ線路を伸ばした。一方、カリフォルニア州のサクラメントから始まったセントラル・パシフィック鉄道が東方へ伸びてきて、ユタ州のプロモントリーで合流した、と書いてあるよ、「ウキペディア」に。この事業にはカリフォルニア州側から大勢の中国人が就労した。1万2000人もいたそうだ。金が取れて鉄道工事をやっているうちは良かったが、1950年代末からカリフォルニア州議会は何度も中国人、日本人を含むモンゴロイドの移住禁止法を議決する。有名なのはペイジ法(1875)で、これは中国人の他アジア人が、苦力(クーリー)、採鉱労働者。売春婦として住みつくことを禁止する法律だった。
1882年5月6日には中国人労働者の全ての移民を10年間禁止したものだが、10年後も別の法律は可決されて継続され、1943年にマグヌソン法で毎年105人まで中国人移民の入国が許可されています。これらが撤廃されたのは1952年になってからです。一方、日本人移民御禁止(排日移民法)は1924年ですから、中国人は大変だったのです。
一方、東から来た鉄道労働者はほとんどアイルランド系のカトリックで、差別されてた。ケネディ家もそうしたアイリッシュ系カトリックの港湾労働者からの成り上がりで、土木建築業で大金持ちになった。『Far & Away』(邦題名『遥かなる大地へ』(トム・クルーズ、ニコール・キッドマン主演、ロン・ハワード監督)にこれにからんだオクラホマ州の「ランドラッシュ」のことが出てくる。
で、西からは中国人労働者。中国人は広東州から海南島あたりの人たちが多かった。鉄道が延びてる時はよかったんだよ。しかし1869年にユタ州で東側からの線と西側からの線がつながると、中国人移民が邪魔者あつかいされるようになった。失業問題。失業した白人たちの恨みが中国人に向かったわけ。中国人たちはよく働くんだよ。アジア系だから物覚えが良くて、長時間労働に耐える。アイルランド人みたいに酒ばかり飲んで楽しもうとしない。当然、企業主はアジア系を採用するわけだ。だから恨みを買った。失業したアイルランド人と土地のゴロツキたちに襲われては、殺されて、頭の皮を剥がれた。日本人の排斥法(排日移民法)ができたのは1924年だから。中国人排斥法は1943年に廃止、1965年の国籍法で大規模な移住が可能になった。中国人は今でも可哀想でね、なにかって言うと中国人は危ないと言われて。日米連合とか言わないで、もっと中国と仲良くしたほうがいい。

―そこは現在の話ですね。中国人てなんか話しても通じないと思われてますよね。

コロナの始まりの頃、日本からマスクを都知事が送ったりしてるじゃない。あの頃いい雰囲気になってたんだよ。マスクと一緒に漢文で、1300年前長屋王が鑑真に宛てた漢詩(山川異域、風月堂天)を送って、異なった土地に居ても風も月も同じだという詩。それで向こうの人が感激してね、雰囲気がよかったんだよね、漢字の文化圏同士でうまくやろうよという雰囲気があった気がする。
で、ニューヨークみたいな街(ゴッサムシティ)を舞台にした映画は、どうしてもこう貧乏人×金持ちっていう図式になるよね。

―最近特にそうですね。

経済的に見れば、ニューヨーク全体が金持ち圏なんだけれど、だからこそ、そこでは貧乏人たちの惨めさが際立つ。

―ですね。でも地域によっての差なんて日本人はほとんどわからないですよね。選挙の時とかの話聞いて少しわかる感じで。

でもトランプ見てればわかるけど知的エスタブリッシュメントに対する反感ってすごいよね。
すぐフランス語使ったり。日本と同じなんだよ。日本もダイバーシティにしたいとかサステナビリティなんてことばかり言う人たちっているじゃない。

―好きな人はそれほど多くはないのかな。わかんないです。

知的エスノセントリズムとかさ、そういうのすごく嫌な人っているよね。

― 私はなんでもSDGsって言うのが嫌です。

アンチ・インテリの人たちはニューヨークタイムズ読まないよ。日本だと朝日新聞になるかな。マスコミとかメディアを敵にしてるような人たちは、「どうせこっちのことなんか考えてくれないんだ」みたいな被害感がある。あの映画の全体に流れてるテーマは同じ。嫉妬したっていう流れがトランプの勝利と時代的に重なっちゃったのが今。
日本ではアベが出てきて、アジアの人が7カ国会議とか20カ国会議で真ん中に立つようになって、西ドイツのメルケルなんかとやりあってる。トランプに説教してるメルケルの間に立っているアベがいたり。

―あれはパフォーマンスだけですよね。実質はやりあえてはいない気が。

真ん中にいなきゃ目立たない。あの鄧小平なんて 155㎝あったかどうかぐらい。あれでも存在感はあった、顔がでかかったよ。偉人というのは顔がでかくなきゃダメなんだと思う。

―それ初めて聞いた。日本では顔が大きいとかってすごく気にする。コンプレックスになるし。

顔がでかいと背がなくても迫力ある。