【連載】映画と私たち『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』「FBIが誕生するきっかけに」(ふじやまままこ)その26

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(Killers of the Flower Moon)は、2023年のアメリカ合衆国の犯罪映画、修正主義的西部劇。監督はマーティン・スコセッシ。主演はレオナルド・ディカプリオ。共演はロバート・デ・ニーロ、リリー・グラッドストーン、ジェシー・プレモンス。本作でスコセッシとディカプリオは、長編映画6度目のタッグとなる。
1920年代のオクラホマ州オセージを舞台とし、石油鉱業権を保持し、高い利益を得ていた先住民オセージ族(英語版)が次々と謎の死を遂げる事件を描く。(Wikipediaより)

 

対談する人

ふじやまままこ
60年代前半に東京で生まれる。広告会社、新聞社、出版社などを経てライターに。斎藤先生とは18歳くらいの時に一度会う。その後30代後半で再会。ウツや発達障害を抱えつつ、なんとなく生きている。

 

FBIが誕生するきっかけに

そもそも石油の権利金は、オセージ族が直接は現金化できないようにされてた。地下の埋蔵物を所有する権利は勝ち取ったものの、ネイティブアメリカンにはそういう知的能力がないから、然るべき後見人をつけるようにと、白人が勝手に決めた。だから金を狙って、後見人になるためにならず者のカーボーイが、その土地に入ってきたわけだ。
弁護士の資格を持ってる人もいたけど、アメリカの弁護士制度って、その当時は相当いい加減だからね、保安官は勝手に民間任用で決めていたし。検察官を選挙で選ぶようになったのもそんな昔のことじゃない。それも州選出の検察官と連邦の検察官、プロセキューター(検察官、選挙でえらばれる)、これもせいぜい約100年前かな。1920年代に入ってからだけど、事件の頃はまだなかったかもしれない。
ホワイトって連邦捜査官は、勝手に作った自衛団が発展したテキサスレンジャー出身で、本当に強くて高身長だったから、彼を主役にしたっておかしくない。

 

―監督もホワイトを主役に考えてたけど、ディカプリオが「こっちの役のほうが面白い」的なことを言ってアーネストにしたとか

アーネストは刑務所から戻り、どうしようもない貧乏暮らしをした後に息子を頼ってきて、そこで死んだ。細身でハンサムだったけど、何か問題を抱えてる様子で、田舎の洒落男みたいな風情だったみたい。

 

―でもアーネストは子供が死んだ時に悲しんでいるような微妙な態度で、家族に対して愛はあったような…

情はあったんだろうけど、彼ら白人の中では、ネイティブアメリカンを殺すことを犯罪と思っていないわけだよ。バッファローの駆逐と同じで、大義名分みたいに捉えていた。バッファローを一頭残さず絶滅させたのは、ネイティブの生活を奪うのが目的。こういうことを組織的にやっていたのがコワい。

 

―人間の残虐性について改めて考えました

この本が書かれたのが1980年代。いくつも賞を獲得して、2000年代になった頃かな、本が再評価されたのを受けて、CIAが再調査に行った。で、わかったことはヘイルとアーネストの一件はほんの一部で、当時は多くの入植者が、ネイティブアメリカンを殺していたってこと。FBI(米国の連邦捜査局)の走りの“BOI”だったホワイト捜査官は、名前が上がった連中のごく一部を捕まえただけでね。結局利益を上げたのは、上司だったJ・エドガー・フーヴァーで、これがFBIを立ち上げるわけ。

 

―そんなに殺人者が大勢いたのに野放しにしたとは。そういえばディカプリオは『J・エドガー』って映画でJ.エドガー・フーヴァーを演じてました

あーそう。この本の主な情報源になったのがアーネストと同じバークハート姓を名乗ってる孫娘。彼女が50代だった80年代には、あの地では石油が枯渇してた。採掘すれば出るけど、一度に大量には出ない。オセージ族は一人当たり年間30万円ほどのお金しか受け取れなくなっていた。映画に出てきた酒場や遊技場はなくなり、牛もいなくて、養殖のバッファローが少しいたみたい。
ヘイルは刑務所を出て90歳近くまで生きて、告発して大統領を動かしたモリ―は、60歳くらいで死んだとエンディングに出てきたね。

(続く)