【連載】映画と私たち『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』「日本の戦後とハリウッドで蔓延した」(ふじやまままこ)その28

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(Killers of the Flower Moon)は、2023年のアメリカ合衆国の犯罪映画、修正主義的西部劇。監督はマーティン・スコセッシ。主演はレオナルド・ディカプリオ。共演はロバート・デ・ニーロ、リリー・グラッドストーン、ジェシー・プレモンス。本作でスコセッシとディカプリオは、長編映画6度目のタッグとなる。
1920年代のオクラホマ州オセージを舞台とし、石油鉱業権を保持し、高い利益を得ていた先住民オセージ族(英語版)が次々と謎の死を遂げる事件を描く。(Wikipediaより)

 

対談する人

ふじやまままこ
60年代前半に東京で生まれる。広告会社、新聞社、出版社などを経てライターに。斎藤先生とは18歳くらいの時に一度会う。その後30代後半で再会。ウツや発達障害を抱えつつ、なんとなく生きている。

 

日本の戦後とハリウッドで蔓延した

ヘイルと仲良くしてる兄弟の医者がいただろ。彼らは盛んに色んな人に毒を盛ってた。なかでもアヘンはよく使っていたみたいだよ。生成したヘロインとか、その手の薬はいくらでもあった。医者だから手に入りやすかっただろう。

 

―彼らはある意味、大活躍でしたね。そういえば最近亡くなった、かしまし娘の長姉はヒロポン中毒で、立ち直ったというのを読んだなあ

ヤク中だったのかな。アンフェタミンだろ。要するにリボキシアンペタミンっていうか、メタアンフェタミンってやつだ。それをヒロポンの名前で大日本製薬が販売してた。

 

―大日本製薬!当時の新聞広告なんか見るとやばすぎる薬の広告が一杯ありましたよね。ヒロポンも疲労回復!とか元気が出る!とか産後にも!滋養強壮に、みたいなコピーがついて売られていたとか

戦前の日本はドラッグ天国だったね。

 

―サザエさんにも、カツオがヒロポンを嗅いで部屋でトリップしている漫画ありました

ヒロポンってごく普通に広告にも出てたよ。

 

―でも昔のハリウッドでもジュディ・ガーランドとか覚せい剤を打たれてたんですよね。寝ないで働かせるためだったかな。だから映画『オズの魔法使い』を見ると、目がイッちゃってる。中学生くらいで見た時、目がおかしいぞ、と思って観てたら、覚せい剤打たれていたとは。大人になって『ハリウッドバビロン』て本で知って、震えました

昔はほんと乱暴な使い方してたね、自然に生えてるもんだから、 そんな悪いもんだと思われてなかった。それを生成して作ったのがオピオイド。モルヒネの有害性を減らして作ったのがヘロインで、それが一般化した。それから追いつかないほどのスピードで、各国が非合法化してね。その作業が大変だったからWHOを作った。1950年のWHOの薬物対策会議に、私も駆り出されていったんだ。

 

―なんと、そうだったんですか!

それで薬物依存とかって話になって、日本でもようやく注目されるわけ

 

―それが50年代とは、そんなに前じゃないような…

で、50年代にはもう、ヒロポン防止法とかで、最も社会的に弱い立場の売春婦の人とか港湾労働者とか、土工といわれていた人達に売っていた。それが暴力団の資金源になったりね。港湾や道路の労働者ってのは仕事はきついし、あまり楽しみがない。で、値段がそれほど高くなかったから買えたんだろうね。

 

―そういう弱い人たちを相手に商売して、あげく中毒にしちゃう。弱者を食い物にする構造は変わってないかも日本…

(終わり)